第六話・後編

 

 

新たなる世界で

~第6話・後編~

 

あれから店の前のベンチに戻るとまだ四人は戻っていなかった。
ベンチに近づき座ろうとすると丁度園長たちが出てき、聖子と良子は両手にいっぱいの服が入っているだろう紙袋を抱えて此方に来た。
 
「おまたせしました。次は翔平君の服を買って、その後に魔器を買いに行きましょう」
「魔器ってなんですか?」
「あぁ、教えていませんでしたか。魔器とは正式には魔法対応式武器または防具のことです。これはもともと魔晶石だったものが高密度になり、人の魂の情報に影響されるようになった物で魔晶密石と呼ばれるものです」
「その魔器はどんな効果があるんですか?」
「魔晶密石に血を吸わせるとその人物に相応しい武器に姿を変えます。その能力はその人それぞれです」
「あの~、もうそろそろ行かないと遅くなりますよ~」
「そうですね、詳しいことは帰ってからにしましょうか」
 
由梨の言葉にベンチに座り説明していた園長達は立ち上がり、近くの男物の店に入った。
 
「私たちがカッコイイ服を見繕ってあげるわ。ね、良子」
「う、うん。」
 
その後に翔平は悪夢を見ることになった。聖子達だけではなく、園長達も加わり着せ替え人形の如く次々に様々な服を着せられた。
ある程度服が決まったとこで園長は財布と服を翔平に手渡して
 
「買い物の練習も社会勉強の一環ですので行ってきなさい、聖子ちゃん達もやりましたよ」
「わかりました」
 
―そういえば通貨の事なんかは教えてもらってなかったな。
 
翔平が服と財布を持ってレジに行くと女性の店員が翔平の方を見てにっこりと笑い
 
「いらっしゃいませ、僕は一人でお買い物? えらいね」
「これお願いします (そういえばまだ六歳だったな)」
「はい。全部で八点になりますので合計で二万八千円になります」
 
翔平が財布からお金を出して店員に渡した。
―紙幣の顔は知らない顔……か。大陸の形は同じ、通貨も同じ、でも元の世界とは違うか。やっぱりここは並行世界で決まりだな。
 
翔平が考えている間に店員が会計を済ませ、お釣りを返してきた。
 
「ありがとうございました、またお越しください」
 
支払いを済ませ四人の元に戻り店を出ると昼時になったからか出店が増えていた。
そのまま全員で広場に戻って、出店でサンドイッチなどを買って昼食をとった。
 
食事を終えて第四街に入り、魔器専門店に入ると翔平たちは初めて見る物に目を輝かせて店の中を見回していた。
店の中には槍や剣、盾や鎧など多くの種類の武器や防具がところせましと置いてあった。
 
「なんで魔器専門店なのに沢山武器や防具があるんですか?」
「魔器というのは個人にしか扱えません。ですが他の人が身につけても他の武具に比べて軽かったり、たまに魔器が共鳴し持ち主ほどではないですが能力が使えることがあるからですよ」
「へ~」
「皆さん、ここで魔器を生成して調整もしますからこちらに来てください」
「「「は~い」」」
 
翔平達が園長の声に従って行くと園長と店長であろう男がいて、カウンターの上には入れ物に入った三つの拳大の玉が置いてあった。
 
「ここに三つあるこの球が魔晶密石です。これに血を少し垂らして魔力を流せば魔器の出来上がりです」
「ミュールさん、準備はできてますんでこちらにどうぞ」
「わかりました、それでは皆さんついてきてください」
 
店長と園長が話し終え、店長が魔晶密石を持ってカウンターの奥の扉の中に入って行き、それに続き五人が入る。
そこは二十人くらい楽に入れる部屋だった。
部屋にはそこらかしこに魔方陣が刻んであって部屋の真ん中にはテーブルが置いてある。
店長は台に近づいて
 
「それではこの台の上に魔晶密石を置いていただき、少々血を垂らして魔力を流してもらえばすぐに形になりますので」
「わかりました、それではまずは聖子ちゃんからどうぞ」
「はい」
 
園長にいわれて聖子はおもむろに台に近づいて、店長からナイフを受け取る。
魔晶密石を静かに台の上に置き、ナイフを人差し指にあてて少しだけできた傷から血が垂れた。
そして両手を魔晶密石に向けて魔力を込めた、その瞬間に魔晶密石から赤く強い光がでてきて全員が目をつむる。
聖子がゆっくりと目をあけると台の上には少し大きめの龍の彫られた弓があった。
 
「これが私の魔器なの」
「名前はご自分でお考えください、力の使い方は持ってみれば分かるはずです」
「それじゃ次は良子ちゃんね」
「は、はい」
 
良子が先ほどの聖子と同じように魔晶密石を置き、血を垂らし魔力を流すと青く発光し、目をあけると美しい細工のされた盾があった。
 
「これは珍しいですね、盾ができることは滅多にないですよ」
「そ、そうなんですか?」
「最近じゃ、剣や槍などの武器が多かったらしいですよ」
「へ~」
 
良子は盾を抱えて小走りに聖子達の元に戻ってきた。
 
「良子ちゃんも無事に終わったわね。最後は翔平君いってらっしゃい」
「はい」
 
翔平が近づき先ほどの二人と同じように工程を終えると黒と白の光がでた。
目をあけるとそこには球のままの魔晶密石があった。
 
……。
…………。
………………。
 
「「「「「は?」」」」」
「あら~?」
「あの~これはどういうことでしょうか?」
 
全員が目を丸くして驚き、由梨のみがのほほんと驚きを示している中に、翔平はおずおずと聞いたがすぐに答えれるものはいなかった。
それから少し経って園長が口を開いた。
 
「店長さん、これはどういうことなんでしょうか?」
「いや、私も長年やっていますがこのようなことは……」
「失敗したということは?」
「ありえません、発光作用があったということは生成が完了したはずです」
「そうですか、翔平君一度持ってみてくれますか? 本当に生成が完了してるなら能力がわかるはずですから」
「はい」
 
翔平が魔晶密石を手に掴むと頭の中に魔器の情報や能力が入ってきた。
 
「どうでした? 翔平君」
「大丈夫でした、これはこれで完成していたんです」
「ほう、というとなぜそのままの形なんだね?」
「これは俺の意思によって形を変えます、槍なら槍、剣なら剣という感じに」
「それじゃ無敵じゃない!?」
「そうでもない、剣なら切れ味で負けるし、盾なら防ぎきれるかわからない」
「はぁ~、長所もあれば短所もあるってことね」
「まぁ問題はないかな」
 
そして魔器の生成を完了してそれぞれの調整を店長に任せて元の部屋にもどり、少しすると調整を終えて魔器を手渡した。
 
「どうぞ、これで魔器の調整は終わりました」
「調整って何をするんですか?」
「調整はまず魔器の固定化です、魔器自体は高純度の魔晶密石なので他の魔力に影響されないようにしました。
次に普段から武器を持ち歩くわけにはいきません、なので小さいアクセサリーになるように変形の魔法をかけて固定化させました」
「変形ですか?」
「はい、翔平さんはネックレス、聖子さんは腕環、良子さんは髪飾りです。変形させるときには元の形になるように念じて、魔力を流していただければ大丈夫です。」
「わかりました、今日はありがとうございました」
「いえいえ、それでは調整が必要な場合などはまたお越しください」
 
挨拶をすませて店を出ると外はもううっすらと暗くなっていた。
しかし街道には電灯が立ち並び昼とあまり変わらないほどの明るさである。
その中を五人はゆっくりと談笑をしながら歩いて帰った。
 
 
 
 
 
あとがき
 
 
第六話・後編が終わりました。しかしながら入学式まで行かなかったのは残念でした。
さすがに学校の授業や宿題が忙しいのもあるのですが何よりアイデアがあまり浮かばないのです!!
しかし、これからもない頭を絞ってがんばっていきますので応援、ご感想、そしてランキングの投票もお願いします。
それではまた次回、入学式編で………。

 

 

 

 

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