第4話・後編

 

 

新たなる世界で

~第四話・後編~

 

朝ごはんを食べたあとみんなで魔力コントロールの練習をして過ごし、昼ごはんを食べてお昼の練習をすることになった。
このとき由梨さんがご飯を作ろうとしてひと騒動あったが……。
そして全員が庭に出て先生がまず魔法についての話をすることになった。
私たちは皆初めて触れる魔法に最も興味があったのだろう園長先生の言葉を聞き逃すまいとして注意して聞いていた。
 
「皆さんが最低限の魔力コントロールができるようなので、これから魔法の練習を始める為にそれぞれの属性を調べましょう」
「属性ですか?」
「属性とは魂の能力とでもいいますか、人はそれぞれ性格があるように魂にも色があるんですよ。そして属性は火、水、土、木、金、とあり、それぞれに派生と呼ばれるものがあります。派生は火ならば熱、炎等、金ならば鉄、雷等と事細かに分類されているのですよ。ここまではわかりましたか?」
「うん」「「は~い」」
「皆さんわかったところで属性と派生を調べて実践に移してみましょう」
 
先生はそういうとポケットからチョークの様なものを取り出して地面に三角や四角などを使った魔方陣を書き、その真ん中に台を置きその上に水晶のようなものを置いた。
 
「それじゃぁ一人ずつ水晶に手を置いて魔力を流してください、そうすれば魔方陣が光ってその色によって属性がわかりますので。まずは聖子ちゃんから調べましょうか?」
「はい」
 
聖子が水晶に手を置いてすぐに魔法陣が真っ赤に光った。
 
「赤く染まったということは火ですね、派生は後でわかりますので次は良子ちゃんどうぞ」
「は、はい」
 
次は良子が少しおどつきながらも手を置くと魔方陣は半分青くもう半分は黄色に光った。
 
「あらあら、二重属性ですか、珍しいですね」
「二重属性ですか?」
「二重属性は言葉の通り二つの属性を持っていることです。相反するものや相乗効果を持つものがあります、相乗効果を示すものをシムルと呼ばれています。良子ちゃんは水と金の属性ですので水の属性を金が増幅させるタイプのシムルですね」
「すごいんですか?」
「もちろんすごいですよ、ちなみにわたしは火と木のシムルですよ。最後は翔君ですよ」
「うん」
 
私は内心緊張しながら手をゆっくりとかざしながらスムーズに魔力を水晶に流し込む。
 
……。
…………。
………………。
 
「先生、これは何の属性になるんでしょうか?」
「……白と黒とは本当に珍しい属性ですよ。白とは光、黒は闇になります。片方ずつは前に発見されていますが光と闇のシムルとは史上初ではないでしょうか?」
 
何っ!? それでは私はとてもラッキーじゃないか。
 
「しかし、光や闇はほぼ計測されることがないので私では魔法を教えることはできないんですよ」
「えっ!? それじゃ私はどうやって魔法を覚えればいいのですか?」
「高位の魔法は基本的に魔法陣によって効果の作用を決めてそこに魔力を通して結果を生み出すものです、しかし感覚で魔法を使う人も少なくはありません。慣れている魔法使いなどは魔法陣などを必要とはしませんし魔方陣は補助のようなものですから、まずは慣れることから始めましょう」
「はい」
 
珍しい属性を持ったことはうれしいけど魔法がどんなものかわからないとはとんだしっぺ返しかもしれないなぁ。
 
「それでは、自分の属性がわかったところで次のステップに移りましょう。皆さん目をつむってリラックスをしてください。そして自分の属性でできることを思い浮かべ、魔力を糧にして結果を起こしてみてください。高位の魔法などではないと魔方陣は必要ありませんから。聖子ちゃんなら魔力を燃料に火をつけるような感じで・・・」
 
目をつむってリラックスをする。
 
次に起こしたい結果を創造する…。
 
創造する……。
 
創造………できねぇ!?
今までこんなことなかったからどういうことをしたらいいか分からん。
しかもあの世界の親に会ってないのと最近いろいろとあったせいで自分の口調が崩れてきているのがわかる。この際男らしく『俺』と言ってみようか、咎めるべき存在もいないしな。
おっと考えが逸れてしまったが、何を創造するべきかな。
ほかの二人はもうできたかもしれないから参考になるかもしれないし、そっと目を開けてみれば気づかれないだろう。
そぉっと。
やっぱり聖子は火の玉らしきものがクルクルと彼女の周りを踊るように回っている。
良子の方は体のまわりを水のベールで覆っているのか。
ふむ、火の玉みたいな光や闇の玉ができるかもしれないな。
光の玉と闇の玉が自分の周りを回るイメージする。
 
「もう目を開けてもいいですよ」
「フー、なれないことはするもんじゃないわね。結構疲れたわ」
「お姉ちゃんは何を想像したんですか?」
「私は火の玉よ。火と言ったら火の玉でしょ、良子は?」
「私はヴェールです。水のヴェールが包むように想像しました。」
「翔平は?」
「俺は光と闇の玉を想像してみたけど」
 
結構想像するのも楽じゃないな、想像を実体化するのに魔力を使って何か力が抜けるし、難しい問題解いた後みたいに頭は疲れるしな。
 
「「あれ?」」
「どした?」
「あんたいつも自分のこと私って言ってなかったっけ?」
「い、いやぁな、もうちょっと男らしくいこうかなと思ってね」
「「なるほど」」
 
やっぱり一人称を変えるって恥ずかしいもんだな。もう顔から火が出る思いだよ、まったく。
 
「皆さん初めてにしてはなかなかお上手ですよ。これから毎日スムーズにできるようになるまでこの練習をしますからがんばりましょうね。」
「あ、あの~?」
「どうしました?」
「属性の派生はどうなったんでしょうか?」
「あぁ、すみません、すっかり忘れてました。テヘッ」
 
テヘッて園長先生、年を考えて発言しましょ……
あれっその右手はなんでしょう?
ガシッ
 
「翔平君、後で二人だけでミッチリ、ミッチリとお話しましょうか? 主に女性に対するマナーについてね」
「きょ、拒否権は?」
「あると思います?」
「ですよねー」
 
なんでわた…俺の心の中がわかったんだー!?この人もしかして仙人なん・・・
 
ギチッ!!
 
「痛いです!? しまってますから!?」
「ふふふ、おいたしちゃいけませんよ~」
「すみませんすみませんすみません、わかったんで放してください~!」
「しょうがありませんね」
 
 
ふぅ、やっと放してもらえたよ。
 
「それじゃ話がそれましたが派生について話しましょうか?」
 
それたのは先生のせいじゃ
 
「なにか?」
「い、いえ!?なんでもありません!!」
 
二人がかわいそうな人を見る目でこっち見てる。
うぐ、そんな目でこっちを見るないでくれ。
先生はそんな俺たちをスルーしながら派生について述べていく。
 
「魔力とはいわば色のついた水の様なものでそれだけでは派生はわからないんです。
だからその魔法を調べることによって似たような魔法でも派生の違いがわかるものなんです。」
「「「へぇ~」」」
「まず聖子ちゃんの派生は振動で、良子ちゃんは属性の水が水で金の派生は炭素ね。翔平君の派生はないわ」
「振動?」
「炭素?」
「ない?」
「まず聖子ちゃんの振動は火の玉ができる前に空気が微小の震動を起こしていたの。
良子ちゃんの炭素というのは黒っぽい黒鉛が出てきてそれを核に水が発生したから。
最後に翔平君は光と闇には派生というものがないの、純粋に光は光、闇は闇なのよ。わかった?」
「「「は~い」」」
 
派生がないとはわかりやすくていいかもしれないな。魔法を本当に自分でできる日が来るとは感激だな。
 
「そういえば先生の属性と派生は何なんですか?」
「私の属性は木で派生は花です。樹木も操れないことはないのですが草花の方が操りやすいんです。」
「見せてはもらえませんか?」
「いいですよ。特別に高位の魔法を見せてあげましょう。高位の魔法はさっきも話した様な魔方陣と詠唱という方法があります。今回は詠唱の方をお見せしましょう」
 
直に高位の魔法を見るのは初めてだから少しワクワクするな。
 
「大地に眠る草花の精霊よ、そなたらの力は大地を切り裂き芽吹いて広がる。今わが声に答えよ、わが声に従え。メディプリウス!!」
 
先生の詠唱の後に少し地面が揺れたと思ったら庭一面が花に覆われていた。
 
「本来だったこの草などは毒を含んでいたりするんですが、今回はただの花にしました」
「わぁ~きれいね」
「すごいですぅ」
「それじゃ皆さんも疲れたでしょうから今日はこの辺で終わりましょうか」
「「「は~い」」」
 
みんな返事をして部屋に入っていく。初めての魔法の実践、高位の魔法の見学すべてが俺を興奮させてくれて今日はもう眠れそうにないな。
 
ガシッ!!
 
「翔平君は二人でちゃんとお話ししなきゃいけませんよ~」
「はい」
 
やっぱり今日は眠れそうにない。
 
 
 
 
 
あとがき
初めての前後に分けての話は大変でしたな。しかしなんとかできあがりました。
これからもますます頑張って更新していきますので応援や感想をよろしくお願いします。
それではまた次回に・・・
 
 
 
 
 
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